環境影響評価書を読む(2) 低周波音についての"印象操作"の姑息
大分臼杵風力発電合同会社(関西電力子会社)による、(仮称)大分・臼杵ウィンドファーム事業の環境影響評価書の騒音・低周波音について、大分県知事意見への対応は(1)でふれたが、住民の意見への回答のところに、まとまった記述がある。
ここに、ウソではないが、不正確で一面的な記述で"印象操作"をしようとする意図が見える。
末尾にリンクをはるが、「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書」の記述が引用されていて、
「風力発電施設の稼働に伴う低周波音の
うち可聴域以外のもの (超低周波音)については、 影響のおそれが少ないとの研究成果・調査実績があ」ると記述されている。「検討会報告書」をここしか引用しないのが、印象操作なのである。
まず、「検討会報告書」で言及されている知見はこの項目だけではない。他にも
・騒音レベルは低いが、より耳につきやすく、わずらわしさ(アノイアンス)につながる場合がある
・景観のような視覚的な要素や経済的利益に関する事項等も、わずらわしさ(アノイアンス)の度合いを左右する
といった知見が示されている。
また、「 風力発電施設から発生する超低周波音・低周波音と健康影響については、明らかな関連を示す知見は確認できなかった」とされているが、これは「わからない」という意味を含み、「影響がない」という断言は避けた表現である。
そして、「おそれが少ない」というのは、少ないがゼロではない、という意味だ。(1)でふれたところで、関電は騒音・低周波音の感じ方に個人差があることを認める記述をしている。確率として低くても稀にはあり得ることを「少ない」という語でごまかそうとしている。
「検討会報告書」の研究・調査の手法の問題点・疑問点はいくつも指摘できるが、それは別に譲りたい。そのような不十分な「報告書」ですら、歪曲して理解、引用して、文書ではまだ慎重な記述になっているが、これまでの説明会などでの口頭での説明では「風車から2kmのお宅では被害はない」と断定してみせるなど、公然と誤った説明をしてみせるのが、これまでの関電のやり方だった。
ここでいかに住民にちゃんと説明してきたかのような記述をしようが、関電にとっての不都合な事実は隠ぺいさせない、というのが私たちの思いである。
「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本
的考え方に関する検討会報告書」(環境省2019年3月)を参照してるとするが、同報告書に詳細な記述はなく、「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書」(環境省、2017年11月)による、としている。
「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本
的考え方に関する検討会報告書」
https://www.env.go.jp/press/files/jp/110948.pdf
「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書」
https://www.env.go.jp/air/noise/wpg/01_161125_huusyasouon_report.pdf
概要資料
https://www.env.go.jp/air/noise/wpg/02_161125_huusyasouon_report_gaiyo.pdf